エンジニアリングマネージャーがこのAI時代でやるべきことって何なんだろうなっていうのを改めて考えたいなと思いまして、考えてみたことをまとめていきたいと思います。
以下のブログ記事やポッドキャストに影響を受けて、自分なりに考えをまとめてみました。
先に結論を言うと、情報の収集やモニタリング、整理といった作業は、AI置き換えられる。課題定義とドメインの最前線に立てるかどうかが分かれ目になるんじゃないかと思ってます。
元々言われててきたようなことにも感じますが、最近は現場レベルでより現実味増してるんじゃないかと思います。
マネジメントの目的はアウトカムを生み出すこと
まずAI時代がどうこうという話の前に、前提として、マネジメントの目的が何かというと、それはアウトカムを生み出すことやその仕組み作りだと思っています。アウトカムとは、ユーザーの行動が変わって、生活が良くなったり、困っていた課題が解決されたりすること。それを数値に置き換えたときに売上や利益につながる。プロダクトを良くするのも、組織を整えるのも、すべてはそのアウトカムにつなげるためにやっている。
以前、EMのロードマップという記事を書いたことがあるんですけど、そこでマネージャーの役割・ミッションとして以下を挙げていました。
- 経営方針やチームの目標を共有し、浸透させる
- 戦略を立てて実行し、問題を解決しながら目標を達成する
- チームのエネルギーを最大化する
- 部下を育成し、適切に評価する
- リスクを迅速かつ適切に処理する
今振り返ると、これらはすべてアウトカムを生み出すための手段ですね。ただ、組織や組織のフェーズによって役割は変わるし、アウトカムを生み出すことなんて、マネジャーじゃなくても必要でしょ、というのはそうだなと思っていますが、本質的には、アウトカムを生み出すこと。それが、自分自身が手を動かすのか、人を介して、チームを介して実現するのか、その違いだと思います。
マネジメントを分解する:収集・整理・意味づけ・介入
マネージャーの仕事を分解すると、大きく4つの層がある。
- 収集 — GitHubのログ、Slackのやりとり、ドキュメント、数字を集める
- 整理 — それらを構造化して、誰が何をしていて、何が起きているかを把握する
- 意味づけ — 今の課題は何か、何を解くべきかを定義する
- 介入 — 課題に対してアクションを起こす。人と話す、方針を決める、自分で手を動かす
このうち1と2は、もうAIにできるようになってきているように思います。エンジニアの場合、プルリクエストやドキュメント、テキストベースのコミュニケーションなど、普段の活動がデータとして残りやすい。目標設定と評価軸、GitHubやコミュニケーションのコンテキストさえ揃えば、AIが自動的に収集・整理してレポートにまとめることは十分に可能でしょう。
つまり、収集と整理を中心にやっている作業は、AIに置き換えられる。 間に入ってコンテキストを仲介しているだけなら、当事者同士で直接話した方が速い。中間で誰かがまとめている状態はコスパが悪い。
もちろん、組織の規模が大きくなると、事業や経営にアラインさせたり組織を開発していくこと自体は必要だと思いますが、モニタリングや整理の部分がAIが自律的にこなせるようになれば、コストは大幅に下がる。
この認識は僕だけのものではなく、複数の人が同じ方向のことを言っている。
ミドル・マネージメント層がなくなり,スパン・オブ・コントロールの拡大と組織のフラット化が進んでいる.— deeeet
純粋に「人の評価や管理だけ」をしているピープルマネジメント専業の人は、確実に必要性が減るかなと考えています。ドメインとロングコンテキストに向き合う組織において、事業の中身に触れずに「人の管理」だけをするポジションには、もはや存在の必然性がありません。— gimupop
マネージャーの仕事を分解すると、チームや個人のコンテキストを理解することと、それに基づいて判断・行動・採用・育成することに大別できます。しかし前者は、GitHubやNotion、各種データソースに転がっている一人一人のアウトプットをエージェントが24時間365日収集・分析することで、自動化が進む可能性があります。
じゃあEMは何をするのか
収集と整理がAIに移った後、EMに残る仕事は「意味づけ」と「介入」です。LayerXのCTOの方のブログにも影響を受けているんですが、大きくは以下の2つが重要かなと思ってます。
1. マネジメントをシステム化する
AIにマネジメント業務を任せるには、まず仕組みを設計しなきゃいけない。「何を評価すべきか」「どういう目標設定が適切か」「どうモニタリングするか」。ここはAIには分からない。エンジニアリングマネージャーとしてのドメイン知識を持った人間が、AIに何をどうやらせるかを指示してシステムを組み上げる必要がある。
マネジメント業務をシステム化してコストを下げていく。この動きができることが、一つ目に求められる能力だ。
2. ドメインにディープダイブする
AIは汎用的な知識や処理は得意だけど、現場に近づけば近づくほどできることが少なくなる。現場で実際に何に困っているのか、ユーザーインタビューで人と直接話す、そういうことはAIにはできない。
だからこそ、課題の最前線に自分で行く。今何が課題で、それを解決すれば事業が前に進むのかプロダクトが良くなるのかを判断できる人が重要になる。ドメインに詳しくなければ、事業を良くするために何をすべきかの判断がつかない。
課題を正しく把握するということ自体が、実は一番難しくて一番大事な仕事だ。この考え方はこのポッドキャストに影響を受けていて、困ったときに何度も聞き直すくらい大事にしている。
具体的には、コードを読む、資料を読む、追っている数字を確認する、自分でSQL書いてみる、関係者に直接話を聞く。そして話を聞くだけじゃなく、自分自身がドメインの最前線に出ていく。待っていてもドメインの解像度は上がらない。
AI時代のEM自己診断
自分の作業がAIに置き換えられそうかどうか、判断する軸を3つ挙げておく。
- 自分の仕事はログ化できるか? — できるなら、それはAIに置き換え可能な仕事だ
- 収集屋になっていないか? — 情報を集めて整理して渡すだけなら、AIの方が速い
- 課題定義に時間を使っているか? — 何を解くべきかを考えることに時間を使えているなら、EMとしての価値は残る
まとめ
このエントリーを書くきっかけは、deeeetさんのブログ記事 でした。AI時代にソフトウェアエンジニアリングのあり方が大きく変わろうとしている。今はまさにその過渡期にいます。
収集と整理はAIに任せる。私たちは課題を定義する側に立つ。ドメインの最前線に出て、何を解くべきかを見つけ、そのためのシステムを作る。そういったことがの重要性が増してくるんじゃないかと思います。
方向性としてはこんな感じだと思いますが、AIを使いこなす、ドメインに潜り込むという所作はもっとテクニカルな部分も多いと思います。今後はこういったことを実践して身につけていきたい。


