人事評価の基本 この1冊ですべてわかるを読んだ

はじめに

『人事評価の基本 この1冊ですべてわかる』を読んだ。

この本で一番印象に残ったのは、人事評価は査定のためだけではなく、育成のためにあるという考え方だった。評価という言葉だけを見ると、点数をつける、ランクを決める、給与や等級に反映する、というイメージが強い。でも本書では、評価を「あるべき姿と現在地の差を確認し、気づきを促し、成長のきっかけにするもの」として説明している。

人事評価制度そのものの解説というより、評価を通じて人を育てるために、マネージャーが何を考えるべきかを整理した本だった。

評価は育成である

本書の中心にあるのは、評価とは育成である、という考え方だと思う。

評価は、できたことを認めるだけではない。足りないことや課題を確認し、次に何を伸ばすのかを明らかにする。その意味では、評価面談は単に評価結果を伝える場ではなく、次に向けた開発課題を一緒に作る場になる。

ここはフィードバックの考え方とも近い。相手の成長につながる情報を、具体的に伝えること。抽象的に「もっとチームワークを意識してほしい」と伝えるだけでは、次に何を変えればいいかがわかりにくい。どんな場面で、どんな行動を期待しているのかまで言葉にする必要がある。

目標設定で悩むことがマネージャーの仕事

目標設定の章も参考になった。

目標は、達成基準が明確であればあるほどよい。どうなったら達成なのかが曖昧だと、期末に評価できない。これは当たり前のようで、実際にやろうとすると難しい。特に開発者の目標は、売上や利益のような数字に直接結びつけにくいことも多い。

本書では、開発者の目標も会社の成果につながる形で考えられると整理されていた。商品やサービスの開発、効率的な仕組みづくり、運用していく人の能力向上。こうした領域は、開発者の仕事そのものでもある。

一方で、それを評価可能な目標に落とし込むのは簡単ではない。定性的な目標でも「どうなったら達成か」を明らかにする必要がある。目標設定は楽ではないが、ここで悩むことにマネージャーの価値がある、という話は納得感があった。

1on1は成長支援の時間

1on1についての章も参考になった。

本書では、1on1の目的はメンバーの成長を促進することだと説明されている。上司が報告を求めたり、指摘をしたりする管理の時間ではなく、メンバーのための時間。終わった後に、メンバーが「話してよかった」と思えることが第一のゴールになる。

評価やフィードバックのためには、日常的に情報を集めておく必要がある。評価のタイミングだけで思い出そうとしても無理がある。普段から話していないと、相手の課題やモチベーション、今どこで悩んでいるかが見えにくい。

人材育成シートの話も印象に残った。キャリア、ライフ、コンピテンシー、ナレッジ、スキル、モチベーションなどの観点で、現在の課題、数年後のあるべき姿、そのための育成施策を整理する。メンバーの成長を「なんとなく期待する」のではなく、現在地とあるべき姿、その差を埋める施策として扱う考え方だ。

こうした準備があると、1on1も評価面談も、単なる状況確認ではなく成長支援の場として使いやすくなると思った。

評価者も育成される

評価会議の話もおもしろかった。

評価者が集まって、それぞれの評価について議論する評価会議は、評価者を評価者として成長させる場でもある。自分だけで評価していると、自分の基準がどれくらい厳しいのか、甘いのか、偏っているのかがわからない。他の評価者が何を見て、どう判断しているのかを聞くことで、評価者としての目線が揃っていく。

評価会議は、単に評価を調整する場ではなく、評価者同士が学習する場でもある。評価の納得性を高めるには、メンバーとの対話だけでなく、評価者側の基準を磨くことも必要になる。

評価基準のズレを放置しない

評価面談では、評価者とメンバーの間で評価基準の解釈がずれることがある。

同じ「期待を上回る」という言葉でも、人によってイメージしている状態が違う。評価基準の一部の言葉だけを切り取って、自分なりに解釈しているケースもある。

そういうときに、いきなり評価結果を説明するのではなく、まず評価基準の意味を具体的にすり合わせる必要がある。評価のズレそのものを問題にするのではなく、どこでズレたのかを明らかにする。これは納得性を高めるうえで大事な観点だと思う。

良い評価を伝えるときも同じで、「よかったです」だけでは足りない。何をもってそう判断したのかを具体的に伝えることが大切になる。

読み終えて

この本を読んで、人事評価は期末のイベントではなく、日々のマネジメントの積み重ねだと感じた。

目標を設定する。普段から観察する。1on1で話す。評価基準をすり合わせる。次に向けた開発課題まで話す。評価者同士で目線を合わせる。こうした日々の活動があって、はじめて評価面談が育成の場になる。

自分にとって大きかったのは、評価を「人を育てるための仕組み」として捉え直せたことだった。まずは、目標の達成基準をより明確にすることと、期待する行動を具体的に言葉にすることから意識していきたい。