はじめに
この本を読んで一番刺さったのは、「コア価値」の話でした。プロダクト開発の判断基準って結局「自分たちのプロダクトやサービス、事業のコア価値は何か」に帰結するんだなと。
顧客への価値提供にブレない軸がなければ、そもそも何かを断る根拠がありません。ビジョン→ロードマップ→タスクへの落とし込み、コア価値による短期・長期の判断軸、判断のプロセスをチームで共有すること。「No」を伝える技術をベースにした「プロダクト開発で良い判断をし続けるための思考法」の本だったと思います。
印象に残ったポイント
コア価値とは何か?コア価値やビジョンが判断基準を作る
本書では「ビジョン→ロードマップ→タスク」と抽象から具体へ落とし込む流れが整理されています。ビジョンはまだ実現できていない将来の理想で、コア価値はそのビジョンに沿ってすでに提供できている価値です。機能やスローガンではなく、「それが欠けた瞬間に体験が壊れるような本質」がコア価値。ビジョンを実現するために今日守るべきものです。日々の意思決定を、ビジョン(長期軸)だけでなくコア価値(短期軸)でもブレを点検できるようになります。
自分が関わっているサービスに当てはめてコア価値を言語化し、判断基準にしていきたいと思いました。
判断力の本質は「正解を出すこと」ではない
良い判断とは、なぜそうしたのかのプロセスをチームで共有すること。結果がどうあれチームが学べて、次に活かせる。これはとても納得感がありました。正解を出そうとして悩むより、「なぜその判断をしたのか」をチームで共有し、結果が外れてもプロセスが共有されていれば学びになる、という考え方は実践していきたいです。
「まずやってみよう」の罠
ビルドトラップという概念も紹介されていて、アウトカム(成果)ではなくアウトプット(作ったもの)で成功を測ろうとして行き詰まる状態のことです。「まずやってみよう」もこれに陥りやすくて、作ること自体が目的化してしまうリスクがあります。私はどちらかというと、まずやってみようと考えるタイプなので、作る前にできることを考える、というのは大事だと改めて思いました。一方で、AI前提だと作るコストが下がるから、悩みすぎるならやっちゃってもいいかなとも思ってます。この辺は時代に合わせてアップデートが必要だと思います。
NoではなくNot
反射的にNoと言うのではなく、「Not Now(今ではない)」「Not That Way(その方法ではない)」のように分類する考え方です。特にNot That Wayは「何を作るか(What)」を問い直すきっかけになる。WhyとHowは意識していたけど、Whatを意識するのあまりなかったかもしれません。あとこの考え方は、プロダクト開発以外でも使えると思うので参考になりました。
KPIは思考の起点
指標に一喜一憂するのではなく、「なぜ動いたか」「この変化は意図したものか」と問い続ける。KPIは中間指標であり、プロダクトの価値を高めるための問いの出発点です。データの受け止め4段階(知覚→シミュレーション→共感→意味づけ)のステップも、指標の扱い方として整理しやすかったです。
追っている指標が本当に妥当かを定期的に見直し、知覚→シミュレーション→共感→意味づけのステップで行動に落とし込むようにしたいです。
3CとNICOのフレームワーク
データだけだと「冷たい事実」として受け取られがちで、そこに物語の温度を与えるのがストーリーテリングです。データのストーリーテリングとは、数字を物語の構造に落とし込んで、意思決定の場に「感情移入できるロジック」を提供する手法です。
具体的なフレームワークとして、ストーリーテリングの3C(状況→対比→帰結)と、NICOフレームワーク(Need, Insight, Choice-of-No, Outcome)が紹介されていました。
提案するとき、断るとき、データを伝えるときに「状況→対比→帰結」「数字→意味→行動」の順序を意識し、NICOフレームワークで、構造化して伝えるようにできるとわかりやすくていいなと思いました。
おわりに
この本で一番大きかった気づきは「コア価値」と「判断力」の話でした。Noを伝えるには、まず自分たちが何を大事にしているのかが明確でなければいけません。コア価値がはっきりしていれば、それが判断の軸になるし、Noの理由にもなります。そして良い判断とは正解を出すことではなく、なぜそう判断したかをチームで共有できること。結果が当たろうが外れようが、そのプロセスが透明であればチームは学べるし、次に活かせます。「Noとは拒絶ではなく、未来の価値への責任ある選択」という結びが、そのことをよく言い表していると思います。
プロダクトマネジメントやユーザーへの価値提供のためにどんなことをしたらいいか関心が高い人におすすめの一冊です。とても良かった。